2021年9月 6日 (月)

いなくなったミーコ

いなくなったミーコ

主人の定年をきっかけに私達は淡路島の高台に引っ越した。

ある日庭先にカリカリに痩せた猫が現れた。あまりの痩せ方に私は胸が痛み日々庭先で餌を与えるようになった。毎日どこからか現れるこの猫に「ミーコ」となずけた。

私が車で帰ってくると山の斜面を駆け下りてくる。かれこれミーコとの毎日は7年目を迎えようとするのに急にこの頃見当たらない。庭先においた猫ハウスは時々雨宿りに入ってくれたミーコのご帰還を待っている。  今日も雨。  でも来ない。

どこかで交通事故にでもあっていないか心配で悶々と途方に暮れる。

日常に中にあって当たり前だったことが突然なくなってしまう歯車の狂ったような喪失感に戸惑っている。

そしてミーコの不在からいずれどちらかが先立つであろう自分たち夫婦にも重ねて考えるようになってしまった。

ふっと城山三郎の「そうか、もう君はいないのか」という本の題名が頭をよぎる。

日々感謝もせずにただ在るだけで無意識のうちに満たされていることがある。

長き不在を知った時初めて「そうか」とぽっかり大きな穴があくのであろう。

それは逃れられない現実としていつかどちらかにやってくる。

ミーコの帰りを待ちつつ、日常の当たり前を一つ一つ拾いながら今だ途方に暮れている。



2021年8月 4日 (水)

今年の夏

 

今年の夏

       

日々オリンピックの映像がテレビをにぎわしています。

勝った喜びの涙、負けた悔しさの涙、、、いろんな涙に感動しながらも心から喜べない、感動できない何かが立ちはだかり、いきなり電源を切ってしまうこともあります。

日本がたくさんのメダルをとり、コロナさえなければ拍手喝采で喜んだであろうと思います。

 

あまりにもコロナが感染拡大してしまい今は火事場の中にいるも同然なのにかたやスポーツの祭典は滞りなく展開されニュースはオリンピックの勝敗を声高らかに叫んでいます。

 

医療従事者の方々はオリンピックどころではなく日々尊い命と直面しコロナという病魔に翻弄されていらっしゃると思うと本当に複雑なきもちです。

 

何が正しいのかがもうわからなくなったのか、日本の首相は「安全、安心」とうわごとのように繰り返し全然安全、安心でない毎日が見えてらっしゃらないようにも思います。

 

真面目で謙虚な日本人の心に期待してお願いばかりのスタイルの政治も悲しいかな、なんの効力もなく死亡者0という日はまだ来ません。

慣れてしまったかのように本日の死者〇人と平然と放送するテレビの声を聞くと悲しく情けなくなります。

 

 

何か今年の夏はおかしい夏です。

命の危機とスポーツの歓喜が交錯したおかしな夏です。

かん高いセミの声だけがいつもの夏と変わらず緑の中に響きわたっています。

 

大切な何かがこれ以上狂わないように祈るばかりです。

 

 

 

                           KOGUMA代表 松本昭子

 

2021年7月 2日 (金)

淡路島の観音さん

 

    淡路島の観音さん

 

海岸線を緩やかにカーブすると真っ白の観音さんが海の青さの中からぽっかり浮かび上がる。

淡路島から舞子へ通う度ここを通るとホッとする。

それは観音さんが亡くなった姉の様な気がするからである。

まだ42歳の若さで亡くなった姉の葬儀の日、夫がぽつんと「節ちゃんは観音さんのような人だった」といった。

そうだ、姉は観音さんだったんだ、、、ちょっとの間、空から降りてきてみんなに優しくしてまた空に帰っていった。。。。火葬場の煙突からの煙を見て私は姉の心を探した。

あの煙と一緒に姉の優しい心もどこかへ消えてしまうんだろうか、、、、、と空を見上げた。

 

あれから30年以上がすぎた。

6年前に淡路島に越してきてぽっかりと舞い降りてきたような巨大な観音さんに出会い、夫が言った言葉がよみがえってきた。

姉さんがいる。

カーブを曲がると海の青と空の青に包み込まれた姉さんがいる。

穏やかに一日の始まりを優しく彩ってくれる姉さんがいる。

「節ちゃん、今日も仕事に行くとよ」、、、と私は九州弁で話しかける。

ここを通るたび優しい風が吹いてきた。

 

 

そんな観音さんが老朽化のためこの6月から取り壊されることになった。

空と海に抱かれ立ちすくんでいる姉さんがまたいなくなる。

 

いなくなった後どんな気持ちでこのカーブを曲がるんだろう。。。。

この白さ、青さを惜しみながら私は今日もこの道をいそいでいる。

 

 

                     KOGUMA代表 松本昭子

2021年6月 4日 (金)

コロナ

 

もう、コロナというおそろしい病気の名前を耳にしてから1年以上がたつ。

昨年の秋には、、、、冬には、、、、、もう終わる、もう終わると期待してきた。

優秀な日本の研究者たちがきっと素晴らしいワクチンをうみだすだろうと期待してきた。

とにかく日本人は優秀であるとなぜだか私は信じている。

国内でワクチンが世界のどこよりも早く生み出されると信じていた。

が、終わるどころかやっかいなウイルスはどんどん形を変えて脅威をふるい、他国からの取り寄せになったワクチンの接種も先進国のどこの国より遅れている。。。。。情けない状況になってしまった。。。。

優秀どころではなくなってしまった。

 

毎日、感染者数の発表は続いているが私は感染者の数よりもお亡くなりになられた方の人数の方に目がいってしまう。

胸が痛む。たとえ1名であっても。

突然ふってわいてきた、得体の知れないような病気におかされて家族とも会えず、最期を迎え孤独に埋葬されるこんな寂しい別れがあるだろうか。

こんな辛さがあるだろうか。

私は絶対に家族とこんな寂しい別れはしたくない。

人としての威厳を、心をも、たやすく奪ってしまうこのウイルスが憎くて仕方がない。。

先日、私の手元にもワクチン接種の票が届いたが、もっと早く届いてたら亡くならずに済んだ方がどれだけいただろうか、、、と思うと手ばなしで喜ぶ気持ちにもなれない。

 

まして最後まで会えずに見送ったであろう多数のご遺族の方々の気持ちを思うと

オリンピックという祭典、いわばお祭りをこの時期に催す日本の姿に

一番大切な「心」の喪失を感じてならない。

 

 

   

 

                          KOGUMA代表 松本昭子

 

2021年4月13日 (火)

田中邦衛

 

役者の田中邦衛の訃報を聞いて寂しく思っています。

俳優というより敢えて役者と呼びたい人でした。

自然で素朴でかつ力強い演技にはこの人そのものが反映されていたように思います。

初めてみたのは高校生の頃、若大将シリーズの中の青大将役の田中邦衛。

口調が面白く若大将の加山雄三より印象に残ったものです。

その頃は面白い、、という印象だけの人でしたが「北の国から」のお父さん役でこの人を大好きになりました。

世の中にこんなあったかーいお父さんはいるだろうか、、、、と思うほど

ほっこりする独特の笑顔、悲しみをこらえた男らしい顔、

その都度あのよく動く唇だけですべてを表現されていたように思います。

地味で自分を誇張せず人そのものも脇役に徹し目立とうとせずそれでいて存在感を強くかんじさせてくれた役者さんだったと思います。

そういう味のある役者がぽつり、ぽつりといなくなっていくのが寂しく、まだあの感動から離れたくない思いです。

田中邦衛の魅力にすっぽり浸りたい何かがあります。

味のある、味の濃い役者さんでした。。。。。。。ね!

 

                       KOGUMA代表 松本昭子

 

 

 

 

 

 

 

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